大阪高等裁判所 昭和54年(ネ)1514号・昭52年(ネ)818号・昭50年(ネ)99号 判決
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【説明】
一、宗教法人の役員の地位には、①住職など儀式信仰等の宗教的活動の主宰者としての宗教上の地位と、②世俗的活動における管理機関としての法律上の地位とがある。そして②は司法審査の対象となるが①はその対象外であるとするのが判例である(最判昭44.7.10民集二三巻八号一四二三頁、最判昭55.1.11民集三四巻一号掲載予定)。そして、本判例は従来判例のない神主につき①に当るとして訴を却下したものである。
二、神社の代務者の選任請求を控訴人神社規則に照らし民訴法七三六条に従い上部組織の主管に任命を請求すべきものとして控訴人神社に対する代務者選任請求を許されないとしている。
【判旨】
宗教法人の役員の地位には、①儀式、教義、信仰生活等、宗教的活動における主宰者たる地位、即ち宗教上の地位と、②世俗的活動における管理機関としての法律上の地位とがある。宗教法人法は宗教団体の宗教活動の側面については法律上の規律の対象とせず、財産的活動、即ち世俗的活動の側面のみを規律の対象としている(宗教法人法一条、一八条五項、八五条)。したがつて、宗教法人の役員のうち、前示①の宗教上の地位にある住職、神主などの地位に関する事項は司法審査の対象とならないが、前示②の法律上の地位(世俗的地位)にあたる代表役員、責任役員等の地位は法律上の争訟性を有し司法審査の対象となるのであつて、このことは宗教法人が宗教法上の地位にある者をもつて法律上の地位にあてる旨を定めている場合にも異ならない(最判昭四四・七・一〇民集二三巻八号一四二三頁参照)。
よつて、宗教上の地位にあたる神主の地位の不存在、その職務執行の禁止を求める被控訴人、参加人の本訴は不適法であるが、宗教上の地位にある神主をもつて法律上の地位(世俗的地位)にある代表役員にあてるとする控訴人神社の代表役員、ないしはその代表役員の代務者、さらに右代表役員を選任する社家の地位に関する事項は法律上の争訟性を有し、司法審査の対象になるといわねばならないから、この点に関する控訴人らの主張は採用できない。
第五責任役員の地位確認、代務者選任請求の検討
一責任役員の地位確認について
前認定第二(一四)、(一七)のとおり、控訴人神社の責任役員が東正興、杤尾一二三の両名であることが明らかであり、控訴人らはこの他に控訴人大有が控訴人神社の代表責任役員であると主張しているが、控訴人大有がその地位にないことは前示第三、二において説示したとおりである。
二代務者選任請求について
(一)前認定第二(七)のとおり、控訴人神社規則一六条二項によると、代務者は本教主管が任免する旨規定しているところ、同認定第二(三二)ないし(三四)のとおり、控訴人大有は控訴人神社の代表役員と称して神社本教代表役員村上春一に対し被包括関係の廃止を通告して、右関係を廃止した。しかしながら、右被包括関係の廃止は、前示のとおり代表役員でない控訴人大有が代表役員と称して行なつたものであり、かつ、その廃止を決議したとされている昭和四四年四月一日の第二回責任役員会議は、同認定第二(三二)に照らし、有効に開催され成立したものとは認められないから、控訴人大有のした前示被包括関係の廃止は無効であるといわねばならない。そうすると、右規則一六条二項による代務者の任命は、神社本教主管が行なうべきものであるから、これを求めるものはまず神社本教主管に対しその任命を請求し、同主管がこれに応じないときは、同主管を被告として代務者任命の意思表示に代る判決を訴求すべきものであつて(民訴法七三六条)、控訴人神社に対し代表役員欠除を理由に代務者任命を請求する権利は存在しない。
第六結論
一以上のとおりであつて、(一)、前示第三、一のとおり第一回社家協議会の協議は有効に存在しないことが明らかであり、その協議の無効の確認を求める部分の本訴請求は、商法二五二条の類推適用によりこれを認めるべきものであるから(最判昭四七・一一・九民集二六巻九号一五一三頁参照)、同条所定の判決の対世効に照らし、無効確認の範囲を当事者間に限定しないで、主文第一項(一)のとおり認容することにし、(二)、控訴人大有が控訴人神社の代表役員の地位にないことは、前示第三に説示したとおりであり、同神社の責任役員が東正興、杤尾一二三の両名であることは前示第五の一に説示したとおりであるから、右地位の不存在ないし存在の確認を求める本訴請求部分は、宗教法人を相手方として請求する限り確認の利益を有し、かつこの判決は対世効を有するものであるから(最判昭四四・七・一〇民集二三巻八号一四二三頁)、当事者間に限定を付さないで、控訴人大有については右地位の不存在を、東、杤尾の両名が右地位にあることを確認し、(三)、控訴人大有に対し、控訴人神社の代表役員としての職務の執行の禁止を求める本訴請求部分を正当として、これを認容し、(四)、控訴人大有が控訴人神社の神主の地位にないこと、及び神主としての職務執行の禁止を求める本訴請求部分は、前示第四に説示したとおり単なる宗教上の地位の確認、その職務執行の禁止を求めるにすぎないものとして、法律上の権利関係の確認ないし不作為を求めるものとはいえず、不適法であるから、この訴を却下することとし、(五)、控訴人神社の社家の範囲が現在確定できないことは前示第三、一、(三)に説示したとおりであり、控訴人神社に対する代務者任命の請求が認められないことは前示第五の二において説示したとおりであつて、これらの請求は、いずれも失当であるからこれを棄却すべきである。
(下出義明 村上博巳 吉川義春)